哲学の発祥地ギリシャでは、何人もの有名な哲学者が生まれました。
中でもずば抜けて大きな存在感を誇るのはソクラテスでしょう。
ソクラテスは紀元前469年ごろ、アテネで石工の父と助産師の母の間に生まれました。
若いころは戦争に歩兵として参加したこともあります。
彼の弟子にはこれまた有名な哲学者プラトンがいます。
プラトンもまたアリストテレスという偉大な哲学者を育てたので、ソクラテスはギリシャ哲学の父と言えるかもしれません。
哲学者としてのソクラテスでもっとも知られているのは「無知の知」の名言でしょう。
「この世でもっとも賢い者は誰か」と疑問を抱いたソクラテスは、デルフィのアポロン神殿の神託を受けに行きます。
神殿の巫女の答えは「ソクラテスより賢い者はなし」。
このお告げにソクラテスは首をひねります。
「自分が一番知恵のある人間だとは思えない。これはどういうことだろう?」
そこで賢者と思われる人にかたはしから美や徳について質問をしますが、誰もはかばかしい答えを出せませんでした。
このときソクラテスは「自分より賢い者はいない」と気づくのです。
つまり、世の中の賢者はさまざまなことを知っているけれど、美・徳・善など人間にとってもっとも大切なことは「知らない」。
そして彼らはそれを自覚していないのに対し、自分は「知らない」ということを「知っている」。
己の無知を知っている点において、周囲の人間より優れているのだ、と理解したのです。
以後ソクラテスは賢者たちに問いかけては論破する「問答法」を行うのですが、これがもとで反感を買い、死刑判決を下されました。